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夏炉冬扇抄

慈恵院の僧侶が、日々を綴ります
夏炉冬扇抄

禅の坊さんの境涯とは

それは簡単に語ってはいけないし、言葉で説明できないものなのかも知れない。

日本には『道』という表現で精神修養をし、その分野を極める世界があります。

柔道や剣道といった身体を鍛え技を磨くもの、書道や茶道のように心の乱れを取り去りそのことに集中するもの。

共にすばらしい武道であり、伝統文化であります。

よく聞く話に、それぞれの分野で極めた人達の中には最後のところで禅門を叩く人が多いといわれます。

どんな道の達人であっても迷いや不安はあるものです。最後の瞬間にその迷いを払拭できるかは最も重要なことになります。

打撃の神様といわれ、また巨人軍の監督時代にV9を達成された川上哲治氏は当時、

梶浦逸外老師の指導を受け、修行僧と同じように禅の教えの下で自己研鑽したことは有名な話です。

 人は誰もが自分で価値観を決め、何が自分にとって得なのか、また何が損なのかを判断して生き方を定めますが、達人が求めた禅の境地、世界とは何なのか。

 禅とは特別なことは何もない、ただひたすら坐ることであります。

「我という小さき心を捨ててみよ、三千世界に満つるいのちぞ」

常に人は自分の心と肉体に支配され振り回され悩み苦しみます。坐禅するとはその束縛から己を解き放すことです。

 ただし、この先のことについては言葉では言い表わし難いもので実際に禅を行じ、体感した者でないとわからない世界と言えましょう。

                                    慈恵院僧侶 田中章恵


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