「初夏」
「目には青葉、山ほととぎす、初鰹」
江戸時代の俳人・山口素堂によるこの一句は、初夏の喜びを見事に表現しています。自然のめぐみを五感で感じられるこの季節、私たちの心もまた穏やかでありたいものです。
けれども現代は、日々さまざまな情報が押し寄せ、暮らしの中の価値や感覚までもがめまぐるしく揺れ動いています。
「諸行無常」とはすべてのものが移り変わるということですが、今の時代はその変化があまりにも速く、知らず知らずのうちに心がせかされてしまうことがあります。
そんな時、ふと休みの日に畑に出て、土に触れ、草木の手入れをしていると、植物たちはただ咲くことに専念し、誰に見られようと見られまいと、静かに命を輝かせていることに気づきます。
私たちもまた、そのようにあるがままに、落ち着いて日々を生きていきたいものです。
慈恵院僧侶 板東
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